四神聡は、頭にある4つのツボです
四神聡(ししんそう)は、頭頂部にある百会の前後左右に位置する4つの奇穴です。
鍼灸では、不眠、精神的な緊張、頭痛、めまい、健忘、頭がすっきりしないといった、東洋医学でいう「神志」に関係する症状で用いられることがあります。
杉本治療院でも、その方の状態に応じて四神聡や百会へ鍼を行ったり、頭部へ指圧を行ったりします。
精神的な症状だからといって頭だけを治療するわけではありません。首肩・背中・腹部・手足など全身を確認したうえで、四神聡を治療穴の一つとして使います。
「四神聡」の神は、四神獣の「神」ではありません
私は九星気学や易を学んでいるため、「四神聡」という名前を見たときに、青龍・白虎・朱雀・玄武の四神思想を連想しました。
しかも四神聡は、百会を中心として前後左右の四方に配置されています。
しかし調べてみると、経穴名としての「神」は、四神獣を指すものではありません。
一般には、
- 四=4つの穴
- 神=神志、精神・意識
- 聡=聡明、明晰
という意味で理解します。
つまり、四神聡と四神思想を直接同じ由来のものとして結びつけることはできません。
それでも「中央と四方」という形は面白い
直接の由来関係は確認できませんが、配置を見ると興味深いものがあります。
四神思想では、中央を基準として四方を捉えます。
四神聡もまた、百会を中心に、その前後左右へ4穴が配置されています。
中国思想には、陰陽五行、方位、天体、季節などを、単独ではなく相互の関係として捉える考え方があります。
そのため私は、四神聡を四神思想そのものだとは考えませんが、「中心を定め、その周囲の四方を見る」という空間の捉え方には、どこか共通するものを感じます。
四神思想そのものについては、すでに別の記事で詳しく紹介しています。
四神思想を重ねるなら「左青龍・右白虎・前朱雀・後玄武」
ここからは、あくまで思想上の考察です。
伝統的な四神思想では、南を前方として、
- 前=南=朱雀
- 後=北=玄武
- 本人の左=東=青龍
- 本人の右=西=白虎
という配置になります。
そのため、仮に四神聡へ四神思想を重ねてみるなら、患者さん本人を基準として、左に青龍、右に白虎、前に朱雀、後ろに玄武と考えるのが自然です。
ただし、これは四神聡の正式な経穴理論ではありません。
経穴学上の事実と、東洋思想を重ねた考察は分けて考える。
ここは大切にしたいところです。
人体の「前は陰、後ろは陽」とは別の座標です
東洋医学では一般に、身体の前面を陰、後面を陽として捉えます。
すると「前が陰なら玄武ではないのか」と考えたくなりますが、これは別の分類です。
前面・後面の陰陽は人体の分類。
青龍・白虎・朱雀・玄武は東西南北という方位の分類。
同じ東洋思想の中でも、基準となる座標が違います。
こうした「何を中心にして、どの方向から見るのか」という考え方は、気学・易・風水・中医学を横断して学んでいると、とても興味深く感じます。
百会・四神聡は精神的な緊張や睡眠の治療で使います
思想としての話も面白いのですが、四神聡は実際の臨床で使う治療穴です。
例えば、
- 考え事が多く頭が休まらない
- 緊張がなかなか抜けない
- 寝つきが悪い・眠りが浅い
- 頭が重い、すっきりしない
- 頭痛やめまいがある
といった方では、状態に応じて百会や四神聡周辺を使うことがあります。
東洋医学では、こうした精神・意識・睡眠に関係する働きを「神志」という視点から捉えます。
もちろん、精神疾患や神経疾患を四神聡だけで治療するという意味ではありません。
全身の状態をみながら、心身の緊張を整えるための一つの治療点として用います。
鍼だけでなく、頭部への指圧も行います
杉本治療院では、百会や四神聡周辺を鍼だけでなく指圧でも施術します。
精神的な緊張が強い方や、パソコン仕事・考え事が多い方では、頭部や後頭部、側頭部まで硬く感じることがあります。
このような場合、頭頂部を強く押すのではなく、頭部全体へゆっくりと圧を入れていきます。
百会・四神聡だけを点として追いかけるのではなく、触診による硬さや反応も確認しながら施術します。
東洋医学は「頭だけ」「心だけ」と分けて考えません
不眠や緊張がある方でも、原因や身体の状態は一人ひとり違います。
ストレスが強く気の巡りが滞っている方もいれば、疲労が強い方、胃腸の調子が悪い方、首肩の緊張が強い方もいます。
そのため、四神聡を使う場合でも、肝・心・脾・腎など東洋医学的な状態や、筋肉・呼吸・姿勢まで確認しながら治療を組み立てます。
頭のツボを使いながら、身体全体をみる。
これが杉本治療院の鍼灸・指圧で大切にしている考え方です。
四神聡から見えてくる、東洋医学の面白さ
四神聡と四神思想に、直接の歴史的なつながりがあるとは確認できません。
だからこそ、無理に同じものとして扱う必要はないと思います。
一方で、百会を中心に四方へ配置される四神聡を見ていると、中国思想に繰り返し現れる「中心と四方」という空間の捉え方を連想します。
鍼灸で実際に使っている一つのツボから、古代中国の方位思想まで世界が広がっていく。
そして思想の話をたどったあと、再び患者さんの身体へ戻り、実際の治療に活かしていく。
私は、こうしたところにも東洋医学を学ぶ面白さがあると感じています。
なお、古代中国の方位思想と陵墓について興味のある方は、こちらの記事でも紹介しています。
▶ 兵馬俑と四神思想はつながる?秦始皇帝の「地下帝国」から見る古代中国の方位思想
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